ChatGPT, Claude, Grok をはじめとする生成AIが、メール、議事録、提案書、設計図面、技術仕様書など、さまざまな仕事を変え始めています。

一方、企業にとって気になるのは、「社員がAIに入力した会社の情報は、本当に安全なのか?」という点です。たとえば、未公開の仕様書や顧客情報を、社員が業務効率化のために外部のAIサービスへ入力してしまうかもしれません。

AI導入では便利さだけでなく、情報をどこで処理し、誰が管理するかを考える必要があります。この記事では「オンプレミスAI」と「クラウドAI」の違い、企業が取り組むべき対策、そしてAI利用を可視化する仕組みを紹介します。

1. オンプレミスAIとクラウドAIは何が違う?

クラウドAIとは?

インターネットなどを通じて外部事業者のサーバー上のAIを利用する方式です。自社で高性能なAIサーバーを購入せずに始められ、最新のモデルを利用しやすいことが魅力です。

メリット

  • 導入が比較的簡単で、初期投資を抑えやすい
  • 高性能なAIをすぐ利用できる
  • 基盤の更新や保守の多くを事業者に任せられる
  • 利用者や処理量の増減に対応しやすい

注意点:入力情報は外部サービスで処理されるため、保存先、学習への利用、アクセス制御、契約条件などを確認する必要があります。

オンプレミスAI (ローカルAI) とは?

企業が自社内に設置したサーバーでAIを動かす方式です。たとえばLinuxサーバーにローカルLLMを導入し、社員が社内ネットワークから利用します。

メリット

  • 適切に構成すれば、AI処理を社内ネットワーク内で完結できる
  • インターネットに接続しない環境でも運用できる
  • 会話履歴やデータの保管方法を自社で管理できる
  • 社内業務に合わせたシステム連携を構築しやすい

注意点:機器の調達、保守、更新、バックアップ、権限管理などは自社の責任です。閉域運用でも内部不正や設定ミスのリスクは残ります。

2. AI時代に増えている「気づかない情報漏えい」

従来のセキュリティ対策は、外部からの侵入やウイルス感染への対処が中心でした。生成AIの普及で、社員が悪意なく機密情報をAIに入力するという新しい課題が生まれています。

  • 営業担当者が顧客名入りの提案書をAIに読み込ませる
  • 開発担当者が未公開の製品仕様書を入力する
  • 人事担当者が個人情報を含む資料を要約させる
  • 経理担当者が社外秘の財務情報を分析させる

会社が把握・承認していないAIツールの利用は、シャドーAIと呼ばれます。IBMの2025年の調査では、調査対象組織の約20%がシャドーAIに起因する情報侵害を報告しました(IBM)。

AIを安全に使うには、外からの攻撃を防ぐだけでなく、社内でどのAIがどのように使われているかを把握することが重要です。

3. オンプレミスなら絶対に安全なのか?

オンプレミスAIは、外部のAIサービスに機密情報を送らずに処理できることが大きな強みです。しかし、オンプレミスだから絶対安全、というわけではありません。

たとえば、VPN機器の脆弱性、社員の権限設定ミス、バックアップ不足、内部不正などがあれば情報漏えいにつながります。

また、AIが読み込んだ文書やWebページに不正な指示が含まれ、意図しない応答や操作を誘導される「プロンプトインジェクション」は、オンプレミスでもクラウドでも起こり得ます(OWASPの関連解説)。

大切なのは、AIの設置場所だけでなく、アクセス権限・更新・監査・AIに許可する操作を適切に管理することです。

4. クラウドAIにも優れたセキュリティ対策がある

「外部サーバーを使うクラウドは危険」と一概には言えません。大手クラウド事業者は、暗号化、物理的な施設の保護、アクセス制御、基盤の脆弱性対策などを提供しています。法人向けには、データの保存地域や接続経路を制御できるサービスもあります。

ただし、事業者が守る部分と利用企業が守る部分は異なります。 アカウントやAPIキーの管理、アクセス権限、公開範囲の設定などは利用企業側の重要な責任です。

クラウドAIを選ぶ場合も、契約内容と管理設定を確認し、利用者に適切なルールを周知することが欠かせません。

5. 企業に向いているのはどちら?

比較項目 オンプレミスAI クラウドAI
設置場所 自社サーバー 外部事業者のサーバー
機密情報の管理 社内で処理を完結できる構成が可能 サービスの契約・設定に依存
インターネット オフライン運用が可能 通常はサービスへの接続が必要
初期費用 サーバー等の設備投資が必要 比較的小さい
継続費用 設備・保守・電力など 利用量・契約に応じた料金
AI性能 自社の計算資源に制約される 最新モデルを利用しやすい
保守 自社で管理 基盤の多くは事業者が管理
カスタマイズ 自社仕様に合わせやすい 提供API・サービス仕様に依存

一般公開された資料の要約やアイデア出しにはクラウドAIが便利です。一方、未公開の設計図面、顧客の個人情報、機密性の高い技術仕様書などには、オンプレミスAIが有力な選択肢になります。

6. これからは「使い分け」が重要になる

すべてをクラウドに任せる必要も、すべてを社内サーバーで動かす必要もありません。情報の重要度に応じて使い分けることが現実的です。

クラウドAIに向いている例:公開情報の調査、一般的な文章の推敲、公開資料の要約、アイデア出し。

オンプレミスAIに向いている例:社外秘の仕様書作成、未公開CAD図面の編集、顧客情報を含む文書処理、機密性の高い社内文書検索。

このような組み合わせをハイブリッド運用と呼びます。どの情報をどこで処理してよいかを、社内ルールとして明確にすることが大切です。

7. AIを安全に使うために企業が取り組むべきこと

企業の規模にかかわらず、次の5つが基本になります。

  1. 利用できるAIを明確にする:会社が承認したサービスと利用ルールを周知する。
  2. 機密情報の取り扱いを決める:外部AIに入力してよい情報と禁止する情報を区分する。
  3. AIの利用状況を把握する:未承認ツールの利用や、問題につながる操作を適切に確認する。
  4. アクセス権限を管理する:社員やAIが参照できるデータを必要最小限にする。
  5. システムを定期的に点検する:サーバー、ネットワーク、AIアプリの設定や脆弱性を見直す。

なお、利用ログの収集・閲覧には、社員のプライバシーや個人情報保護、社内規程への配慮が必要です。

8. AIの安全な利用を支援する「Smart AI Watcher」とは?

ここまで見てきたように、AIの安全な運用には「AIをどこで動かすか」に加え、「社員がどのAIを使い、どのような情報を入力しているか」を把握する仕組みが重要です。

この課題に対する選択肢の一つが、株式会社インテリジェントワークスの Smart AI Watcher(スマートAIウォッチャー) です。

生成AIの利用状況を見える化

Smart AI Watcherは、生成AIの利用や端末操作に関する記録を活用して、企業の情報管理を支援する製品です。対応するAIサービス・ツールについて、利用状況や会話記録を把握することで、会社が認めていないAI利用、いわゆるシャドーAIの発見に役立ちます。

キーワード検知で、機密情報の入力に気づく

たとえば「社外秘」「個人情報」などのキーワードを設定し、対応するAI会話の記録を監視対象にすることで、注意が必要な入力を検知して管理者に通知する運用が考えられます。

重要なのは、これは記録をもとに検知・通知する仕組みであり、AIへの送信を必ず事前に阻止する機能ではないという点です。実際の監視間隔、通知方法、対応AIサービスは導入する製品バージョン・設定で確認してください。

USBなど、AI以外の情報持ち出し経路にも目を向ける

情報漏えいは生成AIだけで起こるものではありません。USBメモリやファイル操作などの記録を組み合わせて管理すれば、端末からの情報持ち出しリスクを幅広く捉える助けになります。利用できる監視・制御機能は製品仕様に応じて確認が必要です。

オンプレミスとクラウド、両方の運用で役立つ

クラウドAIを利用する企業では、未承認AIの利用や機密情報の入力を把握することが課題になります。一方、オンプレミスAIを利用する企業でも、端末操作やアクセス権限、サーバーの監視は欠かせません。

Smart AI Watcherの対応機能を組み合わせれば、AIの利用を禁止するのではなく、利用状況を把握してルール改善につなげるという考え方を実践しやすくなります。

製品の詳細・対応環境・最新仕様はこちら:

Smart AI Watcher 公式製品ページ

9. まとめ:AIを活用する時代だからこそ、利用状況の把握が重要

生成AIは企業の生産性を高める一方で、機密情報の取り扱いに新しい課題をもたらしています。

オンプレミスAIには、情報を社内で処理できる強みがあります。クラウドAIには、高性能なAIを手軽に使える強みがあります。どちらが絶対に安全というわけではありません。

企業が考えるべきなのは、次の3つです。

  • 何の情報をAIに扱わせるのか
  • その情報をどこで処理するのか
  • 誰がAIの利用状況を管理するのか

そして、「AIをどこで動かすか」だけでなく「AIをどう使っているか」を把握することが、これからのセキュリティ対策では重要になります。

Smart AI Watcherのような可視化・監視の仕組みも活用しながら、大切な情報を守り、安心してAIを使える環境を整えていきましょう。

参考資料